控鈕ボタン)” の例文
「それからねえ。ヰクトルやあ。お前はこの薔薇を控鈕ボタンの穴にお插し。ヤコツプやあ。お前もお插し。」
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
薄き汗衫じゆばん一枚、鞣革なめしがははかま一つなるが、その袴さへ、控鈕ボタンはづれて膝のあたりに垂れかゝりたるを、心ともせずや、「キタルラ」のいと、おもしろげに掻き鳴して坐したり。
右の足には黄革の半靴を穿いている。左の足には磨り切れた、控鈕ボタン留の漆塗の長靴を穿いている。その左の方を脱いで、冷たいのも感ぜぬらしく、素足を石畳の上に載せた。
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
さういふ時爺いさんは紋に Constantia et fidelitas といふラテン語の鋳出ゐだしてある、銀の控鈕ボタンの附いてゐる、古い、地の悪くなつたリフレエ服を着て
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
その時君はかね控鈕ボタン附きたる短き上衣を着たまひしこと今も忘れず。その衣をめづらしと見しゆゑ、久しく記憶に殘れるなるべし。我。君は又胸の上に美しき赤きひもを垂れ給ひぬ。
雪を振り落してから、一本腕はぼろぼろになった上着と、だぶだぶして体に合わない胴着との控鈕ボタンをはずした。その下には襦袢じゅばんの代りに、よごれたトリコオのジャケツを着込んでいる。
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
畫工は絲の端を控鈕ボタンの孔に結びて、蝋燭を拾ひ集めたる小石の間に立て、さてそこにうづくまりて、隧道の摸樣を寫し始めき。われは傍なる石にこしかけて合掌し、上の方を仰ぎ視ゐたり。燭は半ば流れたり。