掛離かけはな)” の例文
故郷の椙原村は旭川から東北へ三十里ほど入った僻地で、まるで馬車に毛の生えたような軽便鉄道が一本通っているきり、全く文明から掛離かけはなれた山間に在った。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
後輩の自分が枯草色かれくさいろの半毛織の猟服りょうふく——そのころ銃猟じゅうりょうをしていたので——のポケットにかたからった二合瓶にごうびんを入れているのだけが、何だか野卑やひのようで一群に掛離かけはなれ過ぎて見えた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おもいほか手びろく生計くらしも豊かに相見え候のみならず、掛離かけはなれたる一軒家にて世を忍ぶには屈竟くっきょうの処と存ぜられ候間、お蔦夫婦の者には、愚僧同寮の学僧と酒の上口論に及び、ぼうにも御迷惑相掛け
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)