掛取かけと)” の例文
もう人通りもあるまいと思ったのは、うちの中の考えで、通りへ出ると、掛取かけとりの提灯ちょうちんが、雪の中をめげずにせわしそうに歩いています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがその後しばらくしてそこの嫁が吉田の家へ掛取かけとりに来たとき、家の者と話をしているのを吉田がこちらの部屋のなかで聞いていると
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
きいろい軍服をつけた大尉たいいらしい軍人が一人、片隅かたすみに小さくなって兵卒が二人、折革包おりかばんひざにして請負師風うけおいしふうの男が一人、掛取かけとりらしい商人あきんどが三人、女学生が二人
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
みそかには朝から酒を飲んで切腹の真似まねなどして掛取かけとりをしりぞけ、草の庵も風流の心からではなく、ただおのずから、そのように落ちぶれたというだけの事で、花も実も無い愚図の貧
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)