でっ)” の例文
それでも鬼が来てのぞくか、楽書ででっちたような雨戸の、節穴の下にひいらぎの枝が落ちていた……鬼もかがまねばなるまい、いとど低い屋根が崩れかかって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兎にも角にも、一つの事件を嗅ぎ出すと、柄の無いところに柄をつけ、半分以上は誰かに対する嫌がらせの記事を、三段でも五段でもでっち上げる特別な腕を持っていたのです。
硯友社はこういう時代に起ったので、当時の政治家どもが未熟な政治的空想をでっちて小説家顔するを片腹かたはら痛く思って、これに反抗して化政度の新らしいレネイサンスの運動を起そうとしたのだ。
寄木細工式の繁瑣な神学をでっち上げた人達、朝に一条を加え、夕に一項を添えて、最後に一片の死屍にも似たる、虚礼虚儀の凝塊かたまりを造り上げた人達——それ等はイエスを冒涜者と見做し、神を傷け
「あんな伝説なんかみんな迷信ですよ。あの鼓の初めの持ち主の名が綾姫といったもんですから謡曲の『綾の鼓』だの能仮面の『あやかしの面』などと一緒にしてでっち上げたろくでもない伝説なんです。根も葉もないことです」
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
急な雨の混雑はまたおびただしい。江戸中の人を箱詰はこづめにする体裁ていたらく。不見識なのはもちにでっちられた蠅の形で、窓にも踏台にも、べたべたと手足をあがいて附着くッつく。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)