抱巻かいまき)” の例文
旧字:抱卷
真実ほんにやり切れぬ嬢さまではあるとて見かへるに、美登利はいつか小座敷に蒲団ふとん抱巻かいまき持出でて、帯と上着を脱ぎ捨てしばかり、うつ伏しして物をも言はず。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火桶ひおけをひき寄せ、机にもたれて、もの思いにふけっていたが、やっぱり酔っていたのだろう、そのままうたた寝をしたらしい、眼をさますと背に抱巻かいまきが掛けてあった。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おお、寒い寒い」と、声もふるいながら入ッて来て、夜具の中へもぐり込み、抱巻かいまきの袖に手を通し火鉢を引き寄せて両手をかざしたのは、富沢町の古着屋美濃屋みのや善吉と呼ぶ吉里の客である。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)