手答てごたえ)” の例文
肉の足らぬ細面ほそおもてに予期のじょうみなぎらして、重きに過ぐる唇の、ぐうかを疑がいつつも、手答てごたえのあれかしと念ずる様子である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とそのまま乱暴に引上げようとすると、少しく水を放れたのが、柔かに伸びそうな手答てごたえがあった。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其翌晩、妻が雨戸をしめに行くと、今度は北の戸袋に居た。妻がまたけたゝましく呼んだ。往って繰り残しの雨戸でそっと当って見ると、確にやわらかなものゝ手答てごたえがする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
放つ矢のあたらぬはこちらの不手際ふてぎわである。あたったのに手答てごたえもなくよそおわるるは不器量ふきりょうである。女は不手際よりは不器量を無念に思う。藤尾はちょっと下唇をんだ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)