おそ)” の例文
父忠兵衛も牧も、少女の意のす所をさとっていたが、父ははばかってあえて制せず、牧はおそれて咎めることが出来なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ゆうよ。われ汝に告げん。君子がくを好むはおごるなきがためなり。小人楽を好むはおそるるなきがためなり。それだれの子ぞや。我を知らずして我に従う者は。」
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
開国はむしろ大胆な、進取的な策であるべきはずなのに、それが因循と云はれたのは、外夷ぐわいいの脅迫をおそれて、これに屈従するのだと云ふ意味から、さう云はれたのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
きょうにして敬あらばもって勇をおそれしむべく、かんにして正しからばもって強を懐くべく、温にして断ならばもって姦をおさうべし」と。子路再拝して謝し、欣然きんぜんとして任におもむいた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
女はただ「存じません、存じません」と云った。玄機にはそれが甚しく狡獪こうかいなように感ぜられた。玄機は床の上にひざまずいている女を押し倒した。女はおそれて目をみはっている。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)