あくが)” の例文
あのなかに、いかにも神秘な姿をして浮かび上がっている葛城かつらぎ二上山ふたがみやまには、一種のあくがれさえいだいて来たものだ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
たしかに小説になる。無信仰の現代に産れて、信仰にあくがれる主人公は面白い、屹度きつと書ける。辰馬が喜びさうな小説が出来よう。尤もこの事に付いては、是迄深く考へもしなかつた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
彼のでて帰らざる恋しさにへかねたるゆふべ、宮はその机にりて思ひ、そのきぬ人香ひとかぎてもだえ、その写真に頬摩ほほずりしてあくがれ、彼おのれれて、ここに優き便たよりをだにきかせなば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
射ぬかれて、更にまたあくがれまどふ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)