憂愁うれひ)” の例文
敬之進のことは一時いつときもお志保の小な胸を離れないらしい。柔嫩やはらか黒眸くろひとみの底には深い憂愁うれひのひかりを帯びて、頬もあか泣腫なきはれたやうに見える。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
根が態とせし偽飾いつはりなれば却つて笑ひの尻声が憂愁うれひの響きを遺して去る光景ありさまの悲しげなるところへ、十兵衞殿お宅か、と押柄あふへいに大人びた口きゝながら這入り来る小坊主、高慢にちよこんと上り込み
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いと高くいと深く沈みたる憂愁うれひのもとを
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
言ふに言はれぬ心配なことでも起つたかして、時々深い憂愁うれひの色が其顔に表はれたり隠れたりした。一体、これ奈何どうしたのであらう。聞いて見れば留守中、別に是ぞと変つた事も無かつた様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
君が眉には憂愁うれひあり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
君が眉には憂愁うれひあり
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)