みじ)” の例文
新字:
さうして、その人たちと一緒にゐた時は、隨分みじめだつた。その小さな孃さんのほかには、彼女は、たつたひとりで住んでゐるのかしら。
またこれほど手入れしたその花の一つも見れずに追ひ立てられて行く自分の方が一層のみじめな痴呆者たはけものであるやうな氣もされた。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
しかし今のおれ達の身の上は、清貧などといふことを通り越して、あんまりみじめ過ぎるではないか。月雪花を樂む風流の極意もこの世に生きてゐればこそで、おれ達はもう生命があぶない。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
世の中の人が類を持つて集まるやうに、自分は不具者の中にのみいたはられて、むつましく暮さなけりやならないといふのは堪へられないことだ。そしてそれが什麽どんなみじめで悲しいことだらう。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ああ、それに比べて現實を前にした詩人の何んとみじめなことよ。
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
それからの八五郎のみじめさは、まことに眼も當てられません。
さういふことになると、私の運命はお話出來ない位にみじめになるでせう。あの方は私に愛して欲しいとはお思ひにならないでせう。
みじめな相手の一寸したことに對しても持ちたがる憤慨や暴慢といふものがどんな程度のものだかといふことを了解してゐないからなんだよ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
何といふみじめな返事でせう。
あの方は燒け跡から助け出されました、生きてしかしみじめに傷ついて。一本のはりが幾らかあの方をかばふやうに落ちてゐました。
結局藝術とか思想とか云つてゝも自分の生活なんて實にみじめで下らんもんだといふやうな氣がされて、彼は歩みをゆるめて
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)