愛慕あいぼ)” の例文
さすがの悪魔もあまりにも頑強がんきょうな女性の力にあきれ果てて、愛慕あいぼから逆転して憎悪ぞうおへと、第二の手段に移るほかはなかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かくまで良臣を愛慕あいぼする秀吉の情に打たれながら、一面には、重治の信望がそれほどまで厚かったかを思うのであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともかくそこには美と、美への鑑賞と、美への愛慕あいぼと、美への哲学と、美への生活との縮図があるからである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かれは愛慕あいぼのきまり文句をささやいた——この場合にはとんでもない、ばかげた、背徳の、あわれむべき、それでいて神聖な、この場合にもなお尊厳な文句を。
唯将軍と余の間に一のえんを作ったに過ぎぬ。乃木将軍夫妻程死花しにばないた人々は近来きんらい絶無ぜつむと云ってよい。大将夫妻は実に日本全国民の崇拝すうはい愛慕あいぼまととなった。乃木文学は一時に山をなして出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いづくにか、さまだるる愛慕あいぼのなげき。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)