意気銷沈いきしょうちん)” の例文
先生は「今日は君いやに意気銷沈いきしょうちんしているね」と云ったぎり話頭を転じて、ほかのものと愚にもつかない馬鹿話を始め出した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だがしかし、そのために書きとめておいた備忘に目をとおしてみると、わたしはすっかり意気銷沈いきしょうちんしてしまう。
「君が意気銷沈いきしょうちんしていると娘たちが心配する、それに君、あまり外泊はせん方がよろしいぞ」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
写真でも撮らせたり、ひどく元気よくはしゃいでいるのが怪しいということである。いったい死ぬほどに意気銷沈いきしょうちんしたものなら首くくりのなわを懸けるさえ大儀な気がしそうである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
労働につかれ種々の患難かんなんに包まれて意気銷沈いきしょうちんした時にはあるいは小さな歌謡かよう口吟くちずさむ、談笑する音楽をく観劇や小遠足にも出ることが大へん効果あるように食事も又一の心身回復剤である。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
如何いかなる材器のある人も、時に於てか不遇のために失敗に出会うことはまぬかれぬ。斯様かような場合に於て、もし努力的元気のなき者はたちまちにして失望し、意気銷沈いきしょうちんして再び起つことが出来ないであろう。
現代学生立身方法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「はあ、そうですか。なに訳はありません。すぐ行って見ましょう。容子ようすは帰りがけに御報知を致す事にして。面白いでしょう、あの頑固がんこなのが意気銷沈いきしょうちんしているところは、きっと見物みものですよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)