惣助そうすけ)” の例文
わっしア特別で心得てるんで、誰も知っちゃいますめえよ。知らぬは亭主ばかりなりじゃねえんだから、御存じは魚屋惣助そうすけ(本名)ばかりなりだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別に便たよる所もないから、此の村に元家来の惣助そうすけという者がいるから、それを便って来て、少しは山も田地でんじも持っていたが、四ヶ年あとの出水でみずで押流されて
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
存じたる者はなきやと尋ぬるに菊は暫く考へ成程其節小買物を致惣助そうすけと申者澤の井に頼れ手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その嫁の名が常子、二人の孫の兄が惣助そうすけ、妹が勝子、………と、未亡人は一人々々紹介してから、しばら久濶きゅうかつを叙し合ったが、ここでも雪子を始め姉妹たちの「若さ」が問題にされた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私の家が多少でも青森県下に、名を知られはじめたのは、曾祖父惣助そうすけの時代からであった。その頃、れいの多額納税の貴族院議員有資格者は、一県に四五人くらいのものであったらしい。
苦悩の年鑑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
義理から別離わかれ話になると、お蔦は、しかし二度芸者つとめをする気は無いから、幸いめ組の惣助そうすけの女房は、島田が名人の女髪結。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
………眼が蛍のように光ると云うへびを恐れながら行ったが、一緒に附いて来た菅野家の男の児、六つになる惣助そうすけはこの辺の地理を熟知していて、一寸先も見えない暗中を素ばしこく走り廻った。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)