惡企わるだく)” の例文
新字:悪企
「人聽きの惡いことをいふな、——お粂の口から聽いただけのことでも、俵屋にたゝつた惡企わるだくみの底が深いやうな氣がしてならない」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「奧さんが仰しやつてましたわ、あの厄介者やくかいもの氣立きだての惡い子供を追拂おつぱらへるので嬉しいつて。いつでも人のすることをうかゞつてゐて、こつそり惡企わるだくみをするやうな子をね。」
木立から木立へ移りながら 惡企わるだくみする春の百舌と
閒花集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
浪五郎は仲間の者の惡企わるだくみから、五年前に海賊の一味と間違へられて縛られ、もう少しで首を切られるところを、繩拔けをして助かつた人です。
「畜生! 何か惡企わるだくみをしようと思つて、私の習慣を知りたがるんだ!」
聽いてゐるうちに、俺にはどうも恐ろしい惡企わるだくみの匂ひがして來たよ。惡事を知つた源次を殺して口を一つ封じたのは仕事の山が見えたからだらう
「あつしのはぢなんざ三年でも五年でも我慢しますが、この樣子では曲者は、次の惡企わるだくみを考へてゐるに違ひありません」
「鐘を打ち始めてから、十二の鐘の打ち了へるまでには、離屋へ忍んで行つて、左吉松の惡企わるだくみを見拔き、後ろから首筋を刺すくらゐの暇はあつたのだ」
ねらはれてゐる、間違ひの起らぬうちに、一度見廻つてやつて、惡人の惡企わるだくみを封じて下さるやうに——
「小三郎の脇差で久兵衞を殺し、一と一通り洗つて自分の行李かうりへ入れて置いたのも行屆いた惡企わるだくみだ。あれを見た時は俺も下手人はてつきり小三郎に違ひないと思つたよ」
「所が、岩根は福島嘉平太に半分やるのが惜しくなつた。藤助を惡企わるだくみに引入れて藤助に五十兩か百兩の手間をやつて、福島嘉平太を殺し、三千兩一人占にする事を考へた」
お銀さんを小堀樣の屋敷へ返さない爲に、そんな惡企わるだくみをした筈だ。——手前は五年前からお銀さんを附け廻したが、小堀樣のお屋敷へ上ると、妹のお徳に乘り替へたのだ。
半次はお糸の惡企わるだくみを皆んな知つて居るから、それを種に強引に口説くどいたことだらう。お糸は半次の口から事の露見を恐れて、にせ遺書かきおきまで用意して半次を眠らせる氣になつた。
すべてが金兵衞と番頭の惣吉の惡企わるだくみで、樽屋の身上の危なくなつたのを救ふために、惣吉が曾て錺屋かざりやに奉行したことがあるので、贋金造りを計畫し、更に精巧なものを作る積りで
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「何も彼も見拔いても、多賀屋勘兵衞の惡企わるだくみだけは見拔けなかつたぢやないか」
尤もあの月見の晩は、吾妻屋の方にも惡企わるだくみがあつた。最初果し合ひに持出した徳利には、二本とも南蠻なんばん物の毒藥を仕込み、大井久我之助は何方を取つても助からないやうに仕組んだのだ。
あの時、俺はもう下手人げしゆにんは又六と判つてゐたが、困つたことにまだ證據が揃はない、さうかと言つて、傳七郎をあのまゝにして置くと、又六は又なんか惡企わるだくみをするに違ひないと思つたんだ。
「お前は傳六をうらんだ。そして成瀬屋一家の者を怨んだ。お前の父親をむづかしい公事くじ(訴訟)に引入れて沒落ぼつらくさせ、首をくゝるやうな目に逢はせたのは、傳六と總右衞門の惡企わるだくみだと知つてゐた」
『——近頃本所元町の越前屋半兵衞のところに、いろ/\不思議な事が起つて不氣味でかなはない。いづれは惡人の惡企わるだくみではあらうが、お二人のお孃樣に萬一のことがあつてはいけないからお知らせする——』