悪戯盛いたずらざか)” の例文
しかし両側の人家ではまだともしび一つともさぬので、人通りは真黒まっくろな影の動くばかり、その間をば棒片ぼうちぎれなぞ持って悪戯盛いたずらざかりの子供が目まぐるしく遊びまわっている。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
児供の方でも父の秘蔵を呑込んで、先年死んだ長男の玄太郎が五ツ六ツの悪戯盛いたずらざかりにも「あれはとうちゃんのおにゃん子」といって指一本も決して触れなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「お嫁に行くんだ——やい、やい」と輝子の方に指さして言った悪戯盛いたずらざかりの繁の言葉を胸に浮べた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私達はよせばよいのにと思いましたが、何しろ、十一二という悪戯盛いたずらざかりですから、一体吉公がどんな悪戯をするのか見ていたいという心持もあって、だまって吉公のあとからついて行きました。
納豆合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
手にるな矢張野に置け蓮華草れんげそういえへ入ると矢張並の内儀おかみさんなれども、女郎に似合わぬ親切に七兵衞の用をするが、二つになるおつぎという女の子に九つになる正太郎しょうたろうという男の子で悪戯盛いたずらざか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)