悪念あくねん)” の例文
旧字:惡念
巨大な黒いかげや、空いっぱいの白い顔の事件には、なにかしら、えたいのしれない悪念あくねんがこもっているのを感じました。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けがれを去り悪念あくねんに遠ざかり、一夜を神の前に参籠さんろうすることによって、団体共同の幸福が得られると思っていたことは、仏法の教えよりも、むしろ国固有の神道の方に近かった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わたしのぶかい悪念あくねんは石になってもほろびません。石のそばにるものは、人でもけものでもどくにあたってたおれました。みんなは殺生石せっしょうせきといって、おそれてそばへるものはありませんでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あまりいい気になっているから、すこしいじめてやれと思って、処分せずに、その車を根岸台のガレージに放りこんでおいたというわけ……女の悪念あくねんってどんなものか、よくおわかりになったでしょ。
喪服 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
心なき黄金どくろも、四十面相の悪念あくねんをにくんで、いま、最後の刑罰をくわえているかのように、見えるのでした。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)