念晴ねんばら)” の例文
「構いません、失望しても。ただありのままを伺いさえすれば、それで念晴ねんばらしになるんだから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左右にふり否々いや/\此方へは參り申さず來らぬ者を匿藏かくまうべき筋もなしとさらに取合ねば掃部は焦立いらだちそれがし慥に見屆たることなれば斯は申なり夫にても參らぬとならば我等が念晴ねんばらしに此御寺を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これでは捜索の前途には、殆どすこしの光明をも認めることが出来ない。しかしわたくしは念晴ねんばらしのために、染井へ尋ねにった。そして墓地の世話をしているという家を訪うた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それは僕も知っているが、まあ念晴ねんばらしだ。あらためてもいだろう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれども下女に議論を仕かけるのも一種変な場合なので、「じゃ御天気の日に伺がえば御目にかかれるんですね」と念晴ねんばらしに聞き直して見た。下女はただ「はい」と答えただけであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)