微酔びすい)” の例文
旧字:微醉
謙信の多感はなお微酔びすいをのこしているのか、夕餉ゆうげの後、ひとり唐琴を膝に乗せて、指に七絃を弾じ、微吟びぎんに万葉の古歌をうたっていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
店も閉まった黄昏頃たそがれごろ。南蛮屋は、奥で馳走になったらしく、微酔びすいをおびて、いい機げんで帰りかけたが、ふと伊織を土間の隅に見つけて
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうかして、晩酌ばんしゃくへやに、子や孫たちを集めて、微酔びすいのことばでたわむれなどする折、戯れのうちにも、石舟斎はおしえていた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうおそかったが、玄渓の家を出ると、涼しさに、夏の月夜を足はそぞろになって、微酔びすいを蚊帳につつむのがおしまれた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越前守は、独り酒をんで、ほの紅い微酔びすいを見せ、妻には、良人として体を、子等には、父として体を
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康は、微酔びすいして、まっ赤になった顔を、黙然と垂れて、かれのいうがままを、いわせていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馳走酒に、微酔びすいした使者が、辞して、玄関へ出ると、上野介自身が、そこまで送って来て
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
微酔びすいの中で人々はそう思い合った。これは、土へそそがれた供養くようの酒であると改めて思う。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云い終るとまた、横になって、微酔びすいものうげな眼を、春風になぶらせて閉じてしまった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義元は、微酔びすいおもてに、銀杏扇いちょうおうぎをかざして云った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)