微月うすづき)” の例文
上の方は微月うすづきがさしたようにぼうと明るくなっていて、そこには蓴菜じゅんさいのように円いものが一めんに浮んだようになっていた。
萌黄色の茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
微月うすづきに照されて竹の幹にそうて立っていた、可憐かれんな女のさまを浮べると、伯父に対するうらみも、心の苦痛も、皆消えてしまって、はては涙になってしまった。
倩娘 (新字新仮名) / 陳玄祐(著)
それは草の中の近路と同じような不安であった。それに微月うすづきがあって草の中の路も暗くはなかった。どうせ路伴みちづれがないなら路の近いほうが良いと思った。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小供の背丈せだけほどもある昼間見ると藜藿あかざのような草と粟粒あわつぶのような微紅うすあかい実をつけた草がぎっしり生えた住宅地の入口に、人の足によって通じた一条ひとすじの路がうっすらと微月うすづきの光に見えていた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
崖の石の上には微月うすづきの光のような微白ほのじろい光があった。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)