後庭こうてい)” の例文
老婆は後庭こうていに植ゑたる百合数株、惜気もなく堀りとりて我が朝餉あさげの膳に供し、その花をば古びたる花瓶にけて、我が前に置据ゑぬ。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そういうくせがひどくなると、しまいには、後庭こうていの大きな木によじのぼったり、城壁じょうへきの上にのぼったりするようになりました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
年十三にして既に名をその地の教坊きょうぼうとどめき。生来文墨ぶんぼくの戯を愛しよく風流を解せり。読書とくしょめば後庭こうてい菜圃さいほを歩み、花をみて我机上わがきじょうを飾る。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
屡々自分の家の後庭こうていに設けられた機械体操場にやって来て、一時間も二時間も独りで遊び興じながら、倒立さかだちをしたり、宙返りを打ったり、殆ど倦む事を知りませんでした。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
後庭こうていには藤が咲きかけてい、池のみぎわ燕子花えんしかも、紫の蕾を破ろうとしていた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
後庭こうていの六月の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)