往方ゆくて)” の例文
佐賀市を距る十数里、小城をぎを通ぜる国道と会し、往方ゆくてたひらかなること砥のごとく、しばらくにして牟田部むたべをすぐ、ここも炭坑のあるところなり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
河の岸に生茂つた樺やはしばみや「サツサフラス」の小枝を押し分け乍ら、岸に沿うて登つて行くに、樹々の枝に蔓を渡して、往方ゆくての途に網を張つた、野生の葡萄が、折々足に搦んで、その困難
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
夕ぐれにフルヰアの媼歸りて、われに一裹ひとつゝみ文書もんじよ遞與わたして云ふやう。山々は濕衾ぬれぶすまかつきたるぞ。巣立するには、好き折なり。往方ゆくては遙なるに、禿げたる巖のおもてには麪包パンの木生ふることなし。
我等が往方ゆくてを塞ぎたるは、極めて卑ききはの老若男女なりき。この人々は聖母のみほごらの前にて長きをなし、老いたる猶太ユダヤ教徒一人を取り卷きたり。身うち肥えふとりて、肩幅いと廣き男あり。