当前あたりまへ)” の例文
旧字:當前
彼は立つて、だるい体を机の前まで運んだ。立つた時は風船にでも乗つたかと思ふやうな心持がしたが、机の前に胡坐を掻くと、当前あたりまへの心持に戻つた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
檀家の一軒も無い此寺このてらの貧乏は当前あたりまへだ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
当前あたりまへなら内へ帰るべきであらう。店賃たなちんが安いので此頃このごろ越して来た、新しいこけらぶきから雨の漏る長屋である。しかしそこは恐ろしい敵がゐる。八はいつでも友達と喧嘩けんくわをすることをはばからない。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
寄越よこさ無いのが当前あたりまへだ。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)