張本ちょうほん)” の例文
肝腎かんじん張本ちょうほんを逃がしてしまうからさ。やッつける時には、一網打尽じゃ。今はまず、奴等の罠にはまったと見せかけ、油断をさせておけばいいのじゃ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
みよしからだみごえをかけたのは、この船の張本ちょうほんで、龍巻たつまき九郎右衛門くろうえもんという大男だった。赤銅しゃくどうづくりの太刀たちにもたれ、南蛮織なんばんおりのきらびやかなものを着ていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時代後れの頑物がんぶつ——まあわからずやの張本ちょうほん烏金からすがね長範先生ちょうはんせんせいくらいのものだから、黙って御手際おてぎわを拝見していればいいが——僕の未来記はそんな当座間に合せの小問題じゃない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「世に処するには一歩をゆずるを高しとなす、退しりぞくるは即ち歩を進むるの張本ちょうほん
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「賊でない奴が、ここにいるはずはない。花栄、きさまも今は張本ちょうほんの一人だろうし、そこの椅子いすにいる色の黒い男も、いずれは悪党の頭株にちがいあるまい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若しわしが赤蠍の張本ちょうほんを捕え、その殲滅せんめつを目的とするのでなかったら、可哀相な珠子さんに、これ程怖い思いもさせず、相川さんが麻酔薬で眠らされる様なことも起らなかったであろう。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その落第の張本ちょうほんとも云うべき彼が、いくら年を取ったって、かほどに慇懃いんぎんになろうとは思いも寄らぬ事であった。今日は午後から満鉄の社へ行って、蒙古旅行に関する話をするんだと云っている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蟹江城かにえじょうの内部へ手をまわして、ひそかに内輪から、切り崩しにかかっている者がある。……どうも張本ちょうほんの人物は、蟹江を守る前田種利たねとし遠縁とおえんの関係にある滝川一益らしい」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「楠木が張本ちょうほんらしい」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)