引払ひっぱら)” の例文
旧字:引拂
当の狙われた若い妓は、はッと顔を背けたので、笹葉は片頬かたほ外れに肩へすべって、手を払って、持ったのを引払ひっぱらわれて、飴の鳥はくしゃん、とつぶれる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引払ひっぱらって突きにかゝる途端に、ころり足がすべって雪の中へ転ぶと一杯ののり
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それとも江戸へけえろうかと思う事も有るが、お前が此処に居るうちうしても離れる事は出来ないが、村中むらじゅうで憎まれてるから土手に待伏でもして居て向臑むこうずねでも引払ひっぱらわれやアしねえかと心配でのう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は引払ひっぱらって手を引いた。幻に見えるのは、例の黒いかめ煉薬ねりやくです。——その向った柱には、どんな姿が、どんなありさまになっていたとお思いになります、これにかかってはたまらない。汚らわしい。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)