広大こうだい)” の例文
旧字:廣大
と、路傍ろぼうの稲田のれたにうれしさを覚え、朝の陽にきらめく五穀の露をながめては天地の恩の広大こうだいに打たれ、心がいっぱいになるのだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この人くい鬼は、世にもすばらしい大金持で、王様が、みちみち通っておいでになった、カラバ侯爵こうしゃくのものだという広大こうだい領地りょうちも、じつはみんな人くい鬼のものでした。
近代ドイツ風の交響曲作曲家として、これほど広大こうだいなスケールと、壮麗な表現を持った人はない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
慕わせるより、なつかしがらせるより、一目見た男をする、ちから広大こうだいすくなからず、地獄、極楽、娑婆しゃばも身に附絡つきまとうていそうな婦人おんなしたごうて、罪もむくいも浅からぬげに見えるでございます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ヴォルフのリードは伴奏部を広大こうだいにし、表現は重厚になると共に、アクセントに神経質になって、一種の味を持たせたが、初期のリードに比べると、暗くて鬱陶うっとうしさは免れない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)