幾群いくむれ)” の例文
遊船会社の前の峡口きょうこうは高い高い白い石の橋台に立って、驚くべき長い釣棹つりさおを垂れている人影も見えた。橋の下にも幾群いくむれか糸を投げてうおを待つ影も見えた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
幾群いくむれかに別れて切り合った。槍、竹槍、刀、棒、いろいろの討ち物が閃めいた。悲鳴や怒号が反響した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
屋根が低くて広く見える街路みちには、西並にしなみの家の影が疎な鋸の歯の様に落ちて、処々に馬をはづした荷馬車が片寄せてある。にはとり幾群いくむれも幾群も、其下に出つ入りつこぼれた米を土埃ほこりの中にあさつてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今、幾群いくむれかの坑夫達が、元気よく列を作りながら、坑道の方へ進んでいた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)