平潟ひらかた)” の例文
「左様——海岸の景色といっても大抵きまったようなものでござるが、大洗、助川、平潟ひらかた勿来なこそなどは相当聞えたものでござんしょう」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平潟ひらかたふな番士で、その剣筋、幅もあれば奥ゆきもゆたかに、年配は四十に手のとどく円熟練達の盛年。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そう云えばいつぞや常陸ひたちの国の平潟ひらかたの港に遊んだ時、入り江を包む両方の山の出鼻に燈籠があって岸にはずっと遊女の家が並んでいたのを、いかにも昔の船着場ふなつきばらしい感じだと思ったことがあるのは
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見えるとすれば、この間を隔たる幾日かの前後に、田山白雲を彽徊ていかい顧望せしめた、勿来なこそ平潟ひらかたのあたりの雲煙が見えなければならないはずだが
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鹿島洋かしまなだからこっちの風景をこの通り写して来ている、今もそれ、平潟ひらかたの村から勿来の関、有名な古来の名所だろう、それを、この通り図面にうつし取ったのだ
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
勿来の関を見てから、小名浜おなはまで泊るつもりで、平潟ひらかたの町を出て、九面ここつらから僅かの登りをのぼって、古関こせきのあとへ立って見ると、白雲は旅情おさえがたきものがあります。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)