平時つね)” の例文
お通は家に帰りてより言行ほとんど平時つねのごとく、あるいは泣き、あるいは怨じて、尉官近藤の夫人たる、風采ふうさいと態度とを失うことをなさざりき。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平時つねに変れる状態ありさまを大方それと推察すゐして扨慰むる便すべもなく、問ふてよきやら問はぬが可きやら心にかゝる今日の首尾をも、口には出して尋ね得ぬ女房は胸を痛めつゝ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
強情は平時つねのこと病ひに勝てぬは人の身なるに、其やうな氣みじかは言はで心靜かに養生をせであらんやは、最初はじめよりいひしやうに此家こゝには少しも心をおかず遠慮もいらず斟酌も無用にして
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平時つねに変れる状態ありさまを大方それと推察すいしてさて慰むる便すべもなく、問うてよきやら問わぬがよきやら心にかかる今日の首尾をも、口には出して尋ね得ぬ女房は胸を痛めつつ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
法華経のほん第二十五を声低う誦するに、何となく平時つねよりは心も締まりて身に浸みわたる思ひの為れば、猶誠を籠めて誦し行くに天も静けく地も静けく、人も全く静まりたる、時といひ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)