はた)” の例文
「な、なんだろう」行列の先には、白木の箱をになってゆく者だの、きらきらとかがやく仏具やはたをささげて行く者もあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの他人ひとの云ふことは何でも双手をあげて賛成する村長に話したら村の栄えのために村の客として迎えよう、はたをつくり、野楽隊バンドを繰り出し、花火を挙げて迎えよう
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
またこの寺には一切経がないということを聞いて法然は自分所持の一切経一蔵を施入した処、住僧達喜びの余り老若七十余人華を散し、香をたき、はたを捧げ、きぬがさを揷してお迎えをした。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母屋では、最早もう仕度が出来たと見え、棺が縁の方にき出された。柿の木の下では、寝た者も起き、総立になった。手々てんでに白張提灯を持ったり、紙のはたを握ったり、炬火たいまつをとったりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひどい寄席で、薄汚れたはたが一本、潮風に吹かれて鳴っていた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)