幕吏ばくり)” の例文
幕吏ばくり彼に対して曰く、「汝は梅田源次郎と密謀を企てたるに非ざるか」。曰く、「否」。「汝は御所内に落文おとしぶみなしたること無きか」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その善悪よしあしを、ただすのではない。唯、お前に告げておくのは、わしの見るところ、この儘では、お前の身辺が危いことだ。そちの本心は、どうあろうと、幕吏ばくりが眼を
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中には、負債に窮した幕吏ばくりが、暗に暴民をそゝのかして、徳政令の発布を幕府に迫らしめるといふ有様で、義政の在職三十年に、徳政令を出すこと前後十三回に及んでゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ここにおいてこころざしを改め、聖堂の試験に応じて及第するや狂歌の名を後進の真顔六樹園まがおろくじゅえんにゆづりて幕吏ばくり(支配勘定)となり事務に鞅掌おうしょうするのかたわら旧記を閲覧して『孝義録こうぎろく』の編纂へんさんをなせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
〔評〕徳川慶喜よしのぶ公は勤王きんわうの臣たり。幕吏ばくりの要する所となりて朝敵てうてきとなる。猶南洲勤王の臣として終りをくせざるごとし。公はつみゆるし位にじよせらる、南洲は永く反賊はんぞくの名をかうむる、悲しいかな。
彼が水戸に処し、徳川氏に処し、朝廷に処し、浮浪に処し、幕吏ばくりに処し、鎖港開国に処し、公武合体に処するを見るに、百難を排して一世を平かにし、千紛を除いて大計を定むるの雅量ありしが如し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)