常態じょうたい)” の例文
「いや、ありがとう。持病というものは、ご推察をいただくほど、当人はさして苦痛でもありません。それが常態じょうたいになっておりますから」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、前の話手は、ついとそっぽを向いて、にわかに冷淡になってしまう。それが人間の会話の常態じょうたいであることを悟るまでに、彼は長い年月としつきを要した程である。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
という句がどこぞできざんではないかと思った。余はこの時すでに常態じょうたいうしなっている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわちこれは果実の常態じょうたいではなくまったく一の変態で、つまり一の不具である。すなわちこれが不具であってくれたばっかりに、吾人ごじんはこの珍果ちんかを口にする幸運にっているのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)