市場しじょう)” の例文
赤い色だのあいの色だの、普通市場しじょうのぼらないような色をした小魚こうおが、透き通る波の中をあちらこちらと泳いでいるのが鮮やかに指さされました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕もよくは知りませんが、四・五センチの口径こうけいをもったピストルなんて、市場しじょうにはちょっと見当らない品です」
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
シカチェでは市場しじょうに二、三人そういう露店ほしみせを出して居るだけで、そのほかにあるかないか知りません。とにかく私の行った都会ではこの二つしか見なかったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その前後の一週間ばかりというもの市場しじょうすこぶる閑散であったために、これぞという仕事もなく、午後四時過になると店には叔父と私と二人切りしか居ないようになったが
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
市場しじょうへ買物に出るたびに、今にも御用だと云って肩を掴まれやしないかとヒヤヒヤしていた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
これにひっかかると交易の市場しじょうをかれらに独占されかねません、それで英人商社には荷をさばかないという協約をまとめにかかっているのですが、なにしろ金繰りに詰まってくると
この四月以来市場しじょうには、前代未聞ぜんだいみもんだと云う恐慌きょうこうが来ている。現に賢造の店などでも、かなり手広くやっていた、ある大阪の同業者が突然破産したために、最近も代払だいばらいの厄に遇った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
河ッ童穴の奥は、いつのまにか百つぼ程もひろげられて、板も敷いてある。羽目板も立ててある。むしろや座ぶとん、火鉢やせり台、立派な盗賊の都会、盗品の取引市場しじょうとしてさかっている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この百姓はブルトンの作男でイモーヴィルの市場しじょうの番人である。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
それから幾日いくひか経て八月十七日にギャア・ニマという市場しじょうに着きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)