差物さしもの)” の例文
阿波守の乗っている卍丸——そのふなべりに立てつらねた船印の差物さしものには、桐のかげ紋とまんじの紋、朝の潮風をうけてへんぽんとひるがえった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、これはみなわが白旗城を包囲していた敵が、攻め口を解いて逃げ落ちるさい、道の諸所にあわてて捨て去った差物さしものにござります」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ城楼じょうろう高きところ——さがふじ大久保家おおくぼけ差物さしものと、淡墨色うすずみいろにまるくめたあおいもんはたじるしとが目あたらしく翩翻へんぽんとしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多くは、灌木帯を目がけて跳び降り、その上にまた跳び降り、跳び降り、青葉をかすめる槍の光や差物さしものが、山つつじの花と共に、一瞬、あらゆる色彩のまんじを描いた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)