山間僻地さんかんへきち)” の例文
天文てんもん永禄えいろくの世頃から見れば、ずいぶんって来てはいるが、なお少し山間僻地さんかんへきちに入れば、さながら百鬼夜行のごときものと随所に出会うのが常であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山間僻地さんかんへきちのここらにしてもちと酷過ひどすぎる鍵裂かぎざきだらけの古布子ふるぬのこの、しかもおぼうさんご成人と云いたいように裾短すそみじか裄短ゆきみじかよごくさったのを素肌すはだに着て、何だか正体の知れぬ丸木まるき
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう、流行性感冒は、都会の地を離れて、山間僻地さんかんへきちへ行ったと云うような記事が、時々新聞に出た。が、自分はまだマスクを捨てなかった。もう殆ど誰も付けて居る人はなかった。
マスク (新字新仮名) / 菊池寛(著)
日本橋に一軒というまれなものであったが、それが瓦斯燈ガスとうに変り、電燈に移って今日では五十燭光しょっこうでもまだ暗いというような時代になって、ランプさえもよほどの山間僻地さんかんへきちでも全く見られない
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)