尽日じんじつ)” の例文
旧字:盡日
尽日じんじつ、春をたずねて春を見ず、芒鞋ぼうあい踏みあまねし隴頭ろうとうの雲、帰り来たりて笑って梅花をひねりてかげば、春は枝頭しとうにありてすでに十分)
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
尽日じんじつ北の風が吹いて、時々つめたいほそい雨がほと/\落ちて、見ゆる限りの青葉が白いうらをかえして南になびき、さびしいうらかなしい日であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
満園ノ奇香微風ニ動クハ菟裘ときゅうノ薔薇ヲううルナリ。ソノ清幽ノ情景ほとンド画図モ描クあたハズ。文詩モ写ス能ハザル者アリ。シカシテ遊客寥々りょうりょうトシテ尽日じんじつ舟車ノ影ヲ見ザルハ何ゾヤ。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なんともほかからはっきりはめられないが、美妙斎はそのころから関係のあった、浅草公園の女、石井留女とめじょを、九月尽日じんじつ落籍らくせきして、その祝賀を、その、おなじ雑記帳へも書いているのだ。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
尽日じんじつ雨、山陽さんよう所謂いわゆる春雨はるさめさびしく候」と云う日。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)