尫弱ひよわ)” の例文
色の蒼い、体の尫弱ひよわそうなその子は、いろいろな翫具おもちゃを取り出してしばらく静子と遊んでいるかと思うと、じきに飽きてしまうらしかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
身躰からだではないが、君が此尫弱ひよわなりでどうしてあれだけの詩篇が出來、其詩篇が一々椋實珠むくろうじゆのやうに底光りのした鍛錬の痕を留めてをる、其精力の大さでした。
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
尫弱ひよわかったちいさい頃の房吉の養育に、気苦労の多かったことなどを言立てる隠居のことばを、好い加減に房吉は聞流していた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
白い繊細きやしやな躰と、やゝ黄色い、これも尫弱ひよわさうな躰が、略〻同じやうな脊丈をもつて、二人とも断髪姿で何か嬉しさうに話しながら浴場へおりて来ると
草いきれ (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
道太は暇つぶしに、よく彼女や抱えの女たちと花を引いたが、尫弱ひよわそうに見えるおひろは、そう勝ちもしなかったけれど、頭脳あたまは鋭敏に働いた。勘定も早かった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ある在方ざいかたへくれる話を取り決めて、先方の親爺おやじがほくほく引き取りに来た時、尫弱ひよわそうな乳呑ちのを手放しかねて涙脆なみだもろい父親が泣いたということを、母親からかつて聞かされて
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
が何しろ身体が尫弱ひよわいところへ、今年は別してかんじが強いのと、今一つはお作が苦労性で、いろいろの取越し苦労をしたり、今の身の上を心細がったり、表町のうちのことが気にかかったり
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
丸山の隣へ引っ越して行ってから、この女とお庄はじきに近しいなかになった。女は痩せぎすな尫弱ひよわいような体つきで、始終黙ってはずかしげにしていたが、表に見えるほど柔順すなおではなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
好子は想像とちがつて体がひどく細こくて尫弱ひよわであつた。
二人の病人 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)