小桜縅こざくらおどし)” の例文
「まっ先にきた小桜縅こざくらおどしのよろい着て葦毛あしげの馬に乗り、重籐しげどうゆみを持ってたかの切斑きりふを負い、くわがたのかぶとを馬の平首につけたのはあれは楠正行くすのきまさつらじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
武田、田丸、山国、藤田諸将の書いた詩歌の短冊たんざく小桜縅こざくらおどし甲冑片袖かっちゅうかたそで、そのほかに小荷駄掛りの亀山嘉治かめやまよしはるが特に半蔵のもとに残して置いて行った歌がある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つれの家内が持ってろうというのだけれど、二十か、三十そこそこで双方容子ようすいのだと野山の景色にもなろうもの……紫末濃むらさきすそごでも小桜縅こざくらおどしでも何でもない。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小桜縅こざくらおどしの胴丸に、五枚兜をわざと外し、丸鞘太刀を佩いている彼は、裏切りをした罪悪に、良心苦痛を覚えると見え、顔色蒼ざめ唇ふるえ、視線定まらずただあちこちと
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この外に文庫の出店でみせというような雑誌があった。柳浪が主宰した『小文学』と『江戸紫』と、水蔭が編輯した『小桜縅こざくらおどし』であって、いずれも明治二十五、六年頃の発行であった。
小桜縅こざくらおどしの鎧武者のうしろに身を潜め、息を殺して、屋外の物音に耳をすました。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小桜縅こざくらおどし』という雑誌を出していたが、田山花袋はそれに二、三の小説を書いてなじみになったらしい。そのうちに江見はだんだんと作風が変り、何となく村上浪六のような風になっていった。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)