寥廓りょうかく)” の例文
天地寥廓りょうかく、しかも足もとではすさまじい響きをして白煙濛々もうもうと立ちのぼりまっすぐに空をき急に折れて高嶽たかたけかすめ天の一方に消えてしまう。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
常の如くおのを携へて山奥に入り、柴立しばだちを踏分け渓水たにみずを越え、二里ばかりものぼりしが、寥廓りょうかくたる平地に出でたり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
犇々ひしひしと身に迫って来るのを感じる、声を限りに叫んだが、反響エコーは岩の空洞よりオーイと返すのみ、自分は友を呼ぶ、反響は自分を冷嘲する、寥廓りょうかく無辺むへんの天の一角を彷徨さまようて
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
寥廓りょうかくなる天の下、蕭瑟しょうしつなる林のうち、幽冷なる池の上に音と云う程の音はなんにも聞えぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)