容貌かたち)” の例文
この山とこの池とは二重に反対した暗示をった容貌かたちを上下に向け合っている、春の雪が解けて、池に小波立つときだけあでやかに莞爾にっこりする
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ベアトリーチェは容貌かたちを變へき、思ふに比類たぐひなき威能ちからなやみ給ひし時にも、天かく暗くなりしなるべし 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
湯に浸したガアゼで、家内が顔を拭ってやると、急に血色が頬へ上って、黄ばんだうちにも紅味を帯びた。せ衰えたお房の容貌かたちは眠るようで子供らしかった。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(そのふみは重く、かつ強し。その逢うときの容貌かたちは弱く、ことばいやし。)と言われ、パウロは無念そうに
パウロの混乱 (新字新仮名) / 太宰治(著)
眉毛まゆげはふとく、それにともなう切れ長な眼じりが、下がり気味に流れているため、いささかは愛嬌あいきょうもあって、あやうく“異相なる小男”の残忍さを救っているという容貌かたちである。
かくてピエートロ、容貌かたちの變るに劣らざるまでかはれる聲にて、續いて曰ふ 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
四歳よつ、お五ツと大きゅうおなり遊ばすうち、どこかご気性もお容貌かたちも、臣下の和子わこたちと異なるので、三木どのの千代松ちよまつさまは恐ろしい和子かな——と、街でのおうわさも高かったものと、後々
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)