家持いえもち)” の例文
されば新橋辺にて家持いえもちの芸者は色仕掛のお客と見れば用心なしあまりしげしげ呼ばるる時は芸者の方よりていよく返礼をなして後の難儀を避くるよし
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あの事をまだ覚えていて。あの時お前さんがわたしの言った通りにすると、今はちゃんと家持いえもちになっているのね。
作意でほぼその人となりも知れよう、うまれは向嶋小梅むこうじまこうめ業平橋なりひらばし辺の家持いえもちの若旦那が、心がらとて俳三昧に落魄おちぶれて、牛込山吹町の割長屋、薄暗く戸をとざし、夜なか洋燈をつけるどころ
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是は芝赤羽根あかばねの勝手ヶ原の中根兵藏なかねひょうぞうという家持いえもち町人の所へ忍入り家尻やじりを切って盗取ぬすみとった八百両の内の古金で、皆此の通り三星の刻印の有る古金で有るによって、其方そちが唯貰ったでは言訳が立たぬ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)