室堂むろどう)” の例文
同日は室堂むろどうより別山をえ、別山の北麓で渓をへだたる一里半ばかりの劍沢を称するところで幕営し、翌十三日午前四時同地を出発しましたが
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
鐙小屋あぶみごやの神主さんは、また室堂むろどうへ上ってぎょうをしておいでなさるのだから、誰もそのほかに、あの沼の傍へ立入る者は無いはずです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
立山の絶頂では、室堂むろどうをすぐ脚の下に眺めながら、なぜあのように淋しい頼りない思いに堪え兼ねてあわただしくかけ下りたのか。
秩父のおもいで (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「春の野」と云う感じはまるで起らない、赤城、戸隠の原、或は立山の室堂むろどうの高原や、雲の平、五色ヶ原なども、それぞれ趣の異なった景色ではあるが
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
鐙小屋あぶみごやへいらっしゃるのでしょう。留守ですよ、あそこは。神主様は室堂むろどうへ行って、おりません……ええ、先廻りをして見届けて参りました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長次郎等を室堂むろどうに遣り、米味噌その他の必需品をあがなわしめ、吾等は悠々山巓さんてんを南に伝いて、午後二時、雄山。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わしは昨晩、室堂むろどうへ泊りましての、御陽光を拝みましての、御分身がすっかり身にしみ渡りましたので、よろこんで下山を致して参りましたわい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
室堂むろどうを午前五時頃に出発すれば日帰りの出来る道程である。此路は大正二年七月に近藤茂吉しげきち君が下山の際初めて通過し、同年八月に私は南日なんにち、中村の二君と逆に之を登った。
越中劒岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それがある時は殺生小屋せっしょうごやであり、ある時は坊主小屋であり、あるいは神仏混淆しんぶつこんこうに似たる室堂むろどうであったりする。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)