実入みいり)” の例文
旧字:實入
それに裁許掛見習などの役は、余分の実入みいりとて無かったから、御暇が出れば、すぐにも困る家であった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
これは、だいぶ実入みいりになったが、八丁堀に顔を覚えられて、向うが、相手にしなくなった。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊太の出来るだけの弁舌を振って、彼方此方あっちこっち実入みいりの悪かった田の例をあげる。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「はい、ようやく二三日前に。これでも昔は十日前に植付けたものでごわすが、近頃はずっと遅く成りました。日蔭に成る田にはあまり実入みいりも無かったものだが、この節では一ぱいに取れますよ」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
曰く、これでは地味が荒れ果てる、無代ただで広い背戸を皆借そうから、胡瓜きゅうりなり、茄子なすなり、そのかわり、実のない南瓜を刈取って雑草を抜けという。が、肥料なしに、前栽せんざいもの、実入みいりはない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「近頃の医者は、みな、学問も出来ればわざも出来、従って知行もたくさん取り、薬礼の実入みいりも多分にあり、位も高くなるし、金も出来るのに、哀れやこの道庵は、今も昔も変らぬ、ただの十八文……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ツイ愚痴が出まして、まことにお恥かしい次第でございます。ただいま、申し上げる通り、当節のお医者は、皆学問も出来れば、わざも出来、従って知行も沢山取り、薬礼の実入みいりも多分にあり、位も高くなるし、金も出来るのに……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(庄吉が一人になりゃあ、一体、何うしてあいつは暮すつもりか? 富士春に養われて——深雪さんじゃ、そうは行かないし、と、いって、巾着切はできめえし、俺の前座は、勤まるめえし、勤めたって、前座の実入みいりじゃ二人暮しはできないし——)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)