安曇あずみ)” の例文
信州南安曇あずみでは新田しんでんの市、北安曇では千国ちくにの市などに、暮の市日いちびに限って山姥が買物に出るという話があった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この山が安曇あずみ平野に出張った形なので、観望の範囲も東南の方向にだいぶ広く、大町や池田の町を含んで、あの辺では一般に誰知らぬ人もないと言っていい位だ。
残雪の幻像 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
信濃の国は安曇あずみこおりの山また山——雪におおわれた番所ヶ原を、たったひとりで踏み越えて白骨谷に行くと広言した弁信法師、ふと或る地点で足を踏みとどめてしまいました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
安曇あずみ踊りの稽古をしている!」と誰かが言った。我々は立ち止って、小さな楢の木のこちらから、踊の稽古を見た。どこかの工女か何からしい。野暮な、派手な襟巻が草の上に投げ出してある。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
綿津見は蒼海わだつみのことで、今の安曇あずみ郡は蒼海から出たのであろう、自分は土地に伝わっている神話と地形から考えて、「神河内かみこうち」なる文字を用いる、高地には純美なるアルプス渓谷の意味は少しもない
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
(3)小笠原長時(筑摩、安曇あずみ郡、深志ふかし城〈松本〉)
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
木曾義昌きそよしまさ来謁。義昌に旧領筑摩郡ちくまごおり安曇あずみを与う。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信州でも伊那は普通にモンモであるが南安曇あずみ豊科とよしなではモッカといい、松本市ではモモカといっている。
おばけの声 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
晩には湯に入り、食事後は人夫に安曇あずみ踊にでも案内して貰うがよい。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
安曇あずみ郡を通って越後の強清水こわしみずという所まで行かれますと、そこへ越後の弥彦やひこ権現がお出向きになって、ここまで信濃にはいられては、あまり越後が狭くなるから
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
信州筑摩ちくま安曇あずみの各村などでは、この一年一度の大切な祝の日を、普通にはコバシャゲと謂っている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
曇の字は安曇あずみのズミであるため、ついにエズミになったのを、町村制施行の際に故称に復したのであるが、『出雲風土記』によれば、神亀三年までは文字を恵伴と書き
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私は南安曇あずみ郡の年中行事篇から、この事実を引用するのだが、ここでも家によって少しずつ言うことは違っている。たとえばこの日は一日野菜畠へ入ってはならぬ。入ると虫がつくというもの。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)