“子狗(こいぬ)” の例文
文吾がこの煑賣店に近づいた時は、何處で棄てられたか、見馴れぬ子狗(こいぬ)が一頭(ぴき)、鼻を土に摺り付けて、物の臭ひを嗅ぎ𢌞つてゐた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
年久く飼(かは)るる老猫(ろうみよう)の凡(およ)そ子狗(こいぬ)ほどなるが、棄てたる雪の塊(かたまり)のやうに長火鉢(ながひばち)の猫板(ねこいた)の上に蹲(うづくま)りて、前足の隻落(かたしおと)して爪頭(つまさき)の灰に埋(うづも)るるをも知らず、齁(いびき)をさへ掻(か)きて熟睡(うまい)したり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
店の土間へ這ひ込んだ子狗(こいぬ)に、煑賣屋の主婦の眼を晦ましたのとが、文吾の忍び足の法を會得しかける最初であつたが、近頃ではもう、鼠や子狗がうまく出て來なくとも、小ひさな石ころを一つ
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)