ちゃく)” の例文
貴人というのは、この中に、ただひとりの都の公卿くげだった。熊野どの、熊野どのと仮称かしょうしているが、実は関白家のちゃく近衛前嗣このえさきつぐなのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
著名なる“天皇側近の三房”の一人宣房のぶふさちゃく、中納言藤房のまえでは、勅ならずとも、はるか下賤げせん地下人じげにんだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山県やまがた、小山田、甘糟あまかす、その他の宿将の多くは老い、多くは歿し、いま残っているものは、その次代のちゃくか、乃至ないしはまた、往年の父信玄が直属のつわものとは
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、あいにく北条家九代のちゃくと生れ、天下の執権しっけんという、彼に似合わない政権と武権を双手にしていた。——いや、似合わないとは、彼も彼の肉親も、思いはしない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)