婢妾ひしょう)” の例文
第一のただ一人と共に火に入ったという説もあれば、数百の婢妾ひしょうまきの火に投じてから自分も火に入ったという説もある。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わたくしはここに鷲津知事に随行した人々の中に婢妾ひしょうしげと呼ばれた女のくわわっていた事を書添えて置かなければならない。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
少女は顔をあかくして俯向いてしまった。詩経の句は婢妾ひしょうのことを歌ったものであった。源は少女の気に障ったと思ったので、すぐ他のことに話を移してしまった。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
当時の成上りの田舎侍どもが郷里の糟糠そうこうの妻を忘れた新らしい婢妾ひしょう権妻ごんさいと称されて紳士の一資格となり、権妻を度々取換えれば取換えるほど人にうらやまれもしたし自らも誇りとした。
みな扶持ふち取りで、織田家の工匠部たくみぶに属するものであるから、職方の支配役たる彼らの家は、みな贅沢ぜいたくな居宅を構え、婢妾ひしょうを蓄えて、藤吉郎の今住んでいる桐畑の中の小屋敷などとは
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)