めあわ)” の例文
母の草心尼そうしんにはとうに亡い人だったが、よく明石の家へ遊びに来ていた兼好法師がその母をも説いて、たって覚一にめあわせたひとなのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じ真綿工場の持主であった彼のあによめは、不断銀子の母親の働きぶりを見ていたので、その眼鏡にかない、彼を落ち着かせるために、彼女をめあわせた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
やがて娘にめあわせましたが、幾程もなく順吉は藩を脱してしまいました。養父の失望、娘の悲歎はいうまでもありません。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
せめては是世このよに君とお雪と及ばず乍ら自身媒妁ばいしゃくの労を執って、改めて君にめあわせんものと決心致し、昨夜、一昨夜、殆ど眠らずしてその方法を考え申候……ここに一つの困難というは
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今宵高田にめあわすよしかねて得三に聞いたれば、こもまた心懸りなり、一度家に立返りて何卒なにとぞお藤を救いいだし、またこそ忍び出でなんと、いまわしき古巣に帰るとき、多くの人にあやしませて
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれど父の為俊卿は、その時すでに、伊勢の神官藤波家へ光子をめあわす約束がしてあったので、彼女の乞いを容れなかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またあなたへ自身の愛娘まなむすめめあわせたのも、深い下心あればこそで、その本心は、袁尚を亡ぼして後、冀北全州をわが物とせん遠計にちがいありません。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵にめあわせて、江戸に一家を持たせたら、柳生、小野の二家に加えて、三派の剣宗が鼎立ていりつし、目ざましいこの道の隆盛期を、この新都府に興すであろうと思うのであった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後また、曹操は、自分の娘を、袁譚えんたんめあわせた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)