をひ)” の例文
わたくしは又伊澤の刀自に、其父榛軒しんけんが壽阿彌のをひをしてくしに蒔繪せしめたことを聞いた。此蒔繪師の號はすゐさいであつたさうである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
此世にだ伯母一人をひ一人と云ふのぢや無いか、——亭主には婚礼もせずにかれる、お前の阿父おとつさんの様な非業ひごふな最後をする、天にも地にも頼るのはお前ばかりのだ——まあ、之を御覧よ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
壽阿彌が怪我をした家はをひの家ださうで、「愚姪方ぐてつかた」と云つてある。此姪は其名をつまびらかにせぬが、尋常の人では無かつたらしい。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
イソ/\として燃え上がる火影に凛然りんぜんたるをひかほながめて「何時いつも丈夫で結構だの、余り身体からだ使ひ過ぎて病気でも起りはせぬかと、私ヤ其ればかりが心配での」と言ひつゝ見遣みやる伯母のおもて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
時は文政十年七月末で、壽阿彌はをひの家の板の間から落ちた。そして兩腕をいためた。「骨は不碎候くだけずさふらへ共、兩腕共強く痛め候故」云々しか/″\と云つてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくの如き人の児と生まれ、此の如き人のをひと言はれることを耻づかしくて堪まらないのです、しかるに姉さん、世間の奴等は何と云ふ破廉耻はれんちでせう、学校の校長でも教員でも、山木剛造の児であり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)