姦臣かんしん)” の例文
怨恨えんこんが長く君主に向かい得ないとなると、勢い、君側の姦臣かんしんに向けられる。彼らが悪い。たしかにそうだ。しかし、この悪さは、すこぶる副次的な悪さである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
漢室の衰兆すいちょうおおいがたしと見るや、姦臣かんしん輩出はいしゅつ、内外をみだし、主上はついに、洛陽を捨て、長安をのがれ給い、玉車にちりをこうむること二度、しかもわれら、草莽そうもうの微臣どもは、憂えども力及ばず
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうでは暴民の凌辱りょうじょくを受けようとし、宋では姦臣かんしん迫害はくがいい、ではまた兇漢きょうかん襲撃しゅうげきを受ける。諸侯の敬遠と御用ごよう学者の嫉視と政治家連の排斥はいせきとが、孔子を待ち受けていたもののすべてである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それに、自矜心じきょうしんの高い彼にとって、彼ら小人輩しょうじんはいは、怨恨の対象としてさえ物足りない気がする。彼は、今度ほど好人物というものへの腹立ちを感じたことはない。これは姦臣かんしん酷吏こくりよりも始末が悪い。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)