姥桜うばざくら)” の例文
旧字:姥櫻
モウ四十に近い姥桜うばざくらとは夢にも思えない豊満な、艶麗な姿を、婦人正風会の椅子に据えて、弁舌と文章に万丈の気を吐き始めた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
不意に隔てのふすまをあけて、スラリとそこへ立っているのは、今日は姥桜うばざくらに水の滴るような丸髷姿まるまげすがたのお絹でありました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何処やらにまだ姥桜うばざくらの色香さえもあって、西洋人と云うものは幾つになっても若いものだと感心させたのに、そののち少しずつ気が弱くなり、記憶力が乏しくなり
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
同時にまだ見ぬ姥桜うばざくらの未亡人の不幸せな宿命の上がしきりとあわれにいとしく考えられた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「四十そこ/\の姥桜うばざくらだとさ。あれなら私でも結構だってさ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また現在姥桜うばざくらとなっていても、いまだ一の座を争うべきほどのものが現われて来ないという評価の方が、幾多の人を仰がしめ、悩ましめていたものです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その日一座に連なった幇間ほうかんも芸者もかねて聞き及んだ高名の女師匠を眼のあたりに見うわさに違わぬ姥桜うばざくら艶姿あですがた気韻きいんとにおどろかぬ者なく口々にめそやしたというそれは利太郎の胸中を察し歓心を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)